2008年8月4日月曜日

現代の肖像

次第に夜が明けてきた。
青白く淡い光が、彼女の顔を曖昧にしていく。
彼女は、椅子に座りながら、窓の外を眺めていた。

まるで彼女は、終着駅まで一駅一駅ゆっくりと進む、電車の中にいるようだった。

「一生、安定して、静かに暮らして生きたい。」

彼女はそう言った。そしてその言葉が彼女のすべてだった。私は初めて彼女に会ったときの記憶も思い出せない。現在もあまり目立たないでひっそり仕事をしている。

彼女は収入の大半を貯金している。100万円を貯めたら、投資信託につぎ込むらしい。随分リスキーな生き方をするんだねと言ったら、現在は元本保証のものもあるから大丈夫だと返した。彼女はいつも、老後に向けての貯金テクニックという雑誌を読んでいた。

なぜそこまで安定志向なの?私はいぶかしく聞いたら、彼女は親のせいだと答えた。彼女の親は自営業を営んでおり、常に生活が不安定な状況にあったらしい。「反動なの。今後は親を養いたい。」と言った。そのためには今はせっせと貯金しなければならないと言った。

彼女はSEXが好きだ。週3日は彼氏としている。しかし彼氏以外とするつもりはない。どうやら彼女にとってSEXは性欲を満たすものではないらしい。
「独占欲」
彼女はそう言った。彼氏が犬みたいにペニスを挿入しているのを見て喜んでいるらしい。その彼氏は、完全に彼女の奴隷だった。彼氏は彼女に自ら進んで奴隷になっているようだった。

私は破壊的な衝動が起こり、彼氏に他の女を紹介したいと言ったら、彼女は静かに腹を立ち始めた。「それは私に失礼だし、もしあったら殴る。」「もし浮気相手の方にいってしまったら」「彼氏に間違っていることを気づかせる」

「一生、安定して、静かに暮らして生きたい。」

しかし彼女は必死だった。

2008年8月3日日曜日

現代の肖像 

彼女は、朝焼けがよく似合う女性だった。

まるで、終着駅まで各駅停車で向かうように暮らしている女性だった。

生も死もない。